むくみ(浮腫)について

目次

むくみとは?

「むくみ(浮腫)」とは、体の中の水分が血管からしみ出して皮ふの下や組織にたまり、手足や顔などがふくらんで見える状態です。

夕方になると足首に靴下のあとが残る、といった経験も軽い「むくみ」の一種です。

むくみは一時的な疲れや立ち仕事によるものから、心臓・腎臓・肝臓の病気や血管・リンパの流れの障害まで、さまざまな原因で起こります。全身に出る場合もあれば、片足や片腕だけに出る場合もあります。大きな病気のサインになることもあるため、注意が必要です。


むくみの原因

むくみの原因は大きく「全身性」と「局所性」に分けられます。

全身性の原因

  • 心臓の病気(心不全など) 心臓の働きが弱まると血液を送り出す力が低下し、体に水分がたまりやすくなります。足のむくみや息切れ、横になると苦しいなどの症状を伴うことがあります。
  • 腎臓の病気(ネフローゼ症候群・腎炎など) 尿にたんぱくが多く出てしまうと血液中のアルブミンが減り、水分を血管内にとどめられず全身がむくみます。腎臓のろ過機能が落ちて水分を排泄できない場合もむくみが悪化します。
  • 肝臓の病気(肝硬変など) 肝臓はアルブミンを作る場所です。肝硬変などで合成力が落ちると血管内に水分を保てなくなり、腹水や足のむくみが出ます。
  • ホルモンの異常(甲状腺機能低下症など) 体の代謝や水分バランスが乱れ、むくみの原因になります。
  • 低栄養 十分にタンパク質が取れないとアルブミンが不足し、血液の“水を引き戻す力”が弱まり、むくみが出ます。
  • 薬の副作用 血圧の薬(カルシウム拮抗薬)、痛み止め(NSAIDs)、ホルモン製剤などが原因になることがあります。長期服用で気づかないうちにむくむこともあります。

局所性の原因

  • 深部静脈血栓症(DVT) 片足だけが急に腫れて痛む場合は血栓の可能性があり、放置すると肺塞栓を起こす危険もあるため早急な受診が必要です。
  • 慢性静脈不全(下肢静脈瘤など) 足のだるさや皮ふの色素沈着、こむら返りを伴うことがあります。
  • リンパ浮腫 がんの手術や放射線治療後に起こりやすく、時間とともに硬く太くなっていくのが特徴です。進行すると治りにくくなります。
  • 炎症やアレルギー 細菌感染やアレルギー反応でも一時的に腫れが出ることがあります。

むくみの症状と注意サイン

  • 足首やふくらはぎが腫れ、靴下の跡が深く残る
  • 顔(特に朝のまぶた)が腫れる
  • 指輪が急にきつくなる
  • 皮ふを押すと跡が戻りにくい(圧痕性のむくみ)
  • 手足だけでなく、体重が急に増える、息切れや横になると苦しい

特に注意すべきサイン

  • 片足だけが急に腫れて痛い → 深部静脈血栓症の可能性
  • 息切れ、夜間の呼吸困難、急な体重増加 → 心不全の可能性

こうした症状は放置せず、早めの受診が必要です。


むくみの診断

医師は以下を組み合わせて原因を調べます。

  • 問診と診察:むくみの出方、左右差、発症のスピード、薬の使用歴などを確認
  • 血液・尿検査:腎機能(クレアチニン)、肝機能、アルブミン、甲状腺ホルモン、炎症反応、尿たんぱくなど
  • 心エコー:心不全や肺高血圧を調べる
  • 下肢静脈エコー(ドプラー):血栓や静脈の逆流を確認
  • 腹部エコー・CT:肝臓や腹水、骨盤内の血流の状態を調べる

むくみの治療

原因治療が基本

  • 心不全:利尿薬や心不全治療薬で体液バランスを整え、心臓の負担を減らします。
  • 腎臓病:減塩や水分管理、利尿薬の調整、腎臓内科での治療が必要です。
  • 肝硬変・腹水:スピロノラクトンなどの利尿薬を慎重に使います。過度な除水は腎機能を悪化させるため注意が必要です。肝臓内科での治療が必要です。
  • 深部静脈血栓症:抗凝固薬や弾性ストッキングで血栓を治療します。
  • リンパ浮腫:専門的な圧迫療法、リンパドレナージ、スキンケア、運動療法などを組み合わせます。

生活でできる工夫

  • 減塩:塩分のとりすぎはむくみを悪化させます。加工食品やスープに注意しましょう。
  • 体を動かす:ふくらはぎを動かす運動(つま先の上げ下げ、歩行)は血流を助けます。
  • 長時間同じ姿勢を避ける:デスクワークや長時間の移動ではこまめに休憩を。
  • 弾性ストッキング:正しいサイズを選んで使うと静脈のうっ滞を防ぎます。
  • 足を少し高くして休む:ただし心不全では逆効果のこともあるため、医師の指示に従ってください。
  • 皮ふのケア:乾燥や小さな傷から感染が起こると悪化するため、清潔と保湿が大切です。

放置するとどうなる?

むくみをそのままにすると、皮ふが硬くなり色素沈着や潰瘍を生じやすくなります。感染(蜂窩織炎)を繰り返すこともあります。

リンパ浮腫は慢性化すると線維化が進み、元に戻りにくくなります。

また、背景にある心臓・腎臓・肝臓の病気が進行してしまうこともあります。

完治が難しい浮腫もありますが、治療可能な疾患かを調べることが大切です。


受診の目安

  • 片足だけ急に腫れた・痛い
  • 息切れや夜間の呼吸困難がある
  • むくみと同時に急に体重が増えた

➡ このような場合は、早めに医師へご相談ください。


当院でできること(国分町たにた内科・循環器内科)

  • 問診や触診と血液・尿検査
  • 心エコー・下肢静脈エコーによる詳しい評価
  • 薬の副作用チェックと内服調整
  • 減塩や生活習慣に関する具体的なアドバイス
  • 必要に応じて腎臓内科・肝臓内科・血管外科・皮膚科などとの連携

まとめ

むくみは「疲れ」や「体質」と思われがちですが、体からの大切なサインです。

特に片側だけのむくみや、呼吸困難を伴うむくみは注意が必要です。

気になるむくみが続くときは、ぜひお気軽にご相談ください。

目次