冠動脈疾患を防ぐために 〜心臓を守る生活習慣〜

目次

冠動脈疾患とは

冠動脈疾患とは、心臓の筋肉に血液を送る「冠動脈」が動脈硬化などで細くなり、血流が悪くなる病気です。代表的なものに狭心症心筋梗塞があります。

発症すると命に関わることもあり、初発症状が突然死であるケースもあるほどです。

そのため、発症してから治すよりも、

発症しないように予防することが非常に大切です。


危険因子を知りましょう

冠動脈疾患を引き起こす要因は、多くが体質の影響に加えて生活習慣に関係しています。主な危険因子は次のとおりです。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)
  • 喫煙
  • 肥満・運動不足

これらは「治療や改善が可能なリスク」です。複数が重なるほど危険度は高くなるため、まとめて管理することが勧められています。


血圧の目標値

血圧は「診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上」で高血圧と診断されます。

予防のためには、

  • 診察室血圧 < 130/80 mmHg
  • 家庭血圧 < 125/75 mmHg

    を目標にします。家庭での測定を習慣にし、毎日の変化を把握することが大切です。

2024年までは年齢で血圧の目標値が違いましたが、「2025年の高血圧管理・治療ガイドライン」から上記の内容に変更となりました。


脂質(コレステロール)の管理

コレステロールの摂取量が多いと、LDL(悪玉)コレステロールが上がります。

ガイドラインでは、コレステロール摂取量を1日200mg未満に抑えることが推奨されています。

脂質の管理目標はリスクに応じて異なります。年齢や基礎疾患、血圧などによりリスクの高さが異なりますので、それぞれの状態に応じてLDLCコレステロールの目標値を設定します。

特に、高リスクの場合はLDLコレステロール100mg/dL未満(5〜10%超の高リスク群)を目指すことが示されています。LDLを20〜30%下げることで、冠動脈疾患の発症リスクが約30%低下することが報告されています。

また、心筋梗塞などの冠動脈疾患や脳梗塞の既往がある方、糖尿病をお持ちの方はLDLコレステロールの目標値が70mg/dL未満とさらに低くなります。


血糖の管理

糖尿病は冠動脈疾患の独立した危険因子です。

HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均)を7.0%未満に保つことが一般的な目安です。

高齢者の場合は7.0から8.0%が目標値となることもあります。

運動と食事療法で血糖が改善しない場合は、薬物療法を併用してしっかりコントロールします。


運動のすすめ

ガイドラインでは、運動を「治療」として強く推奨しています。

有酸素運動(歩行・ジョギング・水中歩行など)を中心に、中等度の強さ(3メッツ以上)で毎日30分以上、週150分以上を目標とします。

「ややきつい(Borg指数11〜13)」と感じる程度が目安です。じわっと汗をかく程度のイメージです。

運動を週に3〜4回、12週間以上続けると、

  • 収縮期血圧が2〜5mmHg低下
  • 拡張期血圧が1〜4mmHg低下
  • HDL(善玉)コレステロールが+2.2mg/dL上昇
  • LDLコレステロールが−8.9mg/dL低下といった改善効果が示されています。

座りっぱなしの生活もリスクです。

「立つ・歩く」を意識して、不活動の時間を減らすことも冠動脈疾患予防につながります。


禁煙の効果

喫煙は冠動脈疾患の主要な危険因子で、1日1本でもリスクは1.65倍に上がることが報告されています。

完全に禁煙した人では、5年ほどで心筋梗塞や循環器疾患のリスクが4〜5割低下します。

また、受動喫煙も危険で、煙に常時さらされる人は1.9倍リスクが高くなります。

法的な禁煙対策が進んだ地域では、冠動脈疾患による入院が17%減少した報告もあります。

タバコを吸わないだけで、心臓を守る大きな一歩になります。


体重と食事

体重を減らすと内臓脂肪が減り、血圧・血糖・脂質のバランスが改善します。

特にお腹まわりの脂肪を減らすことが重要です。

また、塩分を控えることも血圧の維持に効果的です。

アルコールは純アルコール25g以下/日(ビール大瓶1本、日本酒1合程度)を目安とし、飲みすぎに注意しましょう。

魚・野菜・豆類・海藻などを多くとり、動物性脂肪や加工食品を控える「和食中心」の食生活がすすめられます。


薬による一次予防

生活習慣の改善だけで十分な効果が得られない場合、薬で補うことが推奨されます。これらの病気は以前は生活習慣が悪いと考えられていた時期もありましたが、近年では体質が原因の多くを占めていると考えられてきています。

しっかり薬を使いながら大きな病気にならないように、うまく付き合っていく必要があります。

  • 高血圧:Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬など
  • 脂質異常症:スタチン系薬(LDL低下で一次予防効果あり)
  • 糖尿病:血糖降下薬(HbA1c目標達成のため)

薬は「長く続けること」が大切です。医師と相談しながら、継続的に治療を続けましょう。


予測ツールを活用してみましょう

ガイドラインでは、危険因子(血圧・血糖・脂質・喫煙など)を入力すると、今後10年間で冠動脈疾患や脳梗塞を起こす確率を数値で示すツールが紹介されています。

自分の状態を数値で見ることで、予防への意識が高まります。

脂質異常症のリスクを知るためのツールが動脈硬化学会のホームページで公開されています。
https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool/


まとめ 〜生活習慣を整えることが最良の治療〜

たとえ遺伝的に冠動脈疾患になりやすい体質があっても、

若いころから健康的な生活を続けることや適切な治療を受けることで、発症を大幅に減らすことが可能です。

血圧・血糖・脂質を適正に保ち、タバコを吸わず、適度に体を動かすこと。

それが心臓を守る最も確かな方法です。

毎日の生活を少しずつ見直すことが、将来の自分の健康を守ることにつながります。


このページは「日本循環器学会 2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」を参考に作成しました。

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